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第4話 椅子の歴史 古代 〜エジプト
椅子の歴史は、人類の文明の興りとともに始まりました。
世界中で農耕が始まり、それは定住生活をもたらし、やがて文明の勃興へとつながっていきます。
なかでも世界四大文明と呼ばれる、メソポタミア、エジプト、インダス、黄河の各文明は、大河流域で興り、めざましく進歩しました。
これらの文明は、今からおよそ4,000年くらい前から発展したのですが、文明が興ったかなり早い段階で、支配する者とされる者の別が生まれていました。
エジプト文明は、紀元前3000〜500年ごろ栄えた、全国土を支配する強大な王(ファラオ)が君臨する時代でした。
エジプトでは2,000年以上にわたり、およそ30の王朝が興亡しました。
紀元前3000〜2000年ごろの「古王朝時代」は王朝の権威の最も強い時代で、この時期に多数のピラミッドが建設されました。
エジプトの発達した文明をうかがわせる数々の遺跡は皆さんもご存じかと思います。ピラミッド、スフィンクス、ミイラやマスクなど…。

数々の遺跡の中に、強大な権力の象徴であったことを示す豪華絢爛な椅子が出土しています。
ツタンカーメン王の黄金の玉座は、エジプト第18王朝の栄華を今日に伝える大変貴重な遺跡です。
これは木に金箔をはった黄金の椅子で、彫刻や宝石で豪華に飾られ、いかに財力があったかがわかります。また、支配力の大きさは、ひじかけの鳥が羽を広げた彫刻や獅子(ライオン)の頭、前脚の獅子の足がつめをたて、大地をがっしりつかんでいるさまに見られます。
この椅子に座る王は、富と権力とを掌握した存在であることを象徴しているのです。
この時代は、一握りの王侯貴族が大多数の農民と奴隷を支配していました。
椅子は、王侯貴族が使う家具で、背もたれの有無やその高さ、肘掛けの有無などによって身分の高さが区別されていました。その他大多数の庶民は、床に座る生活を営んでいました。
* * * * *
このように椅子は、本来の機能とは別の目的で発展を始めました。
すなわち、椅子の持つ機能は「権力の象徴」であり、決して快適な生活を送るための家具ではなかったのです。
椅子が「快適性」を追求するようになるのは、かなり最近のことなのです。
『椅子に座ることは、もともと栄誉のしるしであった。椅子に座った者は、自分の臣下あるいは奴隷たる他の人びとの上に座ったのと同然であった。かれが座っているあいだは、かれらは立っていなければならなかった。かれがいい気持ちでいる限りは、かれらの疲労などは歯牙にもかけられなかった。もっとも大事なのはかれであり、守らなければならないのはかれの神聖な力であった』
(エリアス・カネッティ『群衆と権力』の一節より引用)
(つづく)
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