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第16話 おわりに
腰痛についてながながと話してまいりました。
ここまでおつきあいくださったことに感謝申し上げます。
「腰痛」とひとくちにいっても、その症状は人それぞれです。
力仕事や重労働からくる腰痛、骨や筋、または内臓などのトラブルからくる腰痛、そして、夏樹静子さんのような、いわゆる「心身症」からくる腰痛など…。
椅子と腰痛との関係は、「外因性」と呼ばれる、腰や背骨などに外部から負荷をかけ続けた結果生じる痛みに集約されます。
そして、その主たる原因は、長時間同じ姿勢を続けることによる筋肉の緊張や、背骨が不自然な形で曲がり続けることによる神経への圧迫によるところが大きいのです。
それらを未然に防ぐには、頻繁に姿勢を変えること、これが簡単で効果的な対策であることをお話ししました。
一方、椅子の方から腰痛防止のためにアプローチしてくれることはないのでしょうか。私たちの方からばかり歩み寄っていたのでは、何だか椅子に片思いをしているようで悔しいですね。椅子の方からも私たちに近づいてきてほしいものですねぇ…。
本来、椅子は、それを利用する人それぞれの体格、体型、座り方などに合ったものを用意し、利用することが望ましいのはいうまでもありません。
皆さん一人ひとりがご自分のための椅子を用意することができるのであれば、それはまさに理想といえるでしょう。そして、その幸運に恵まれた方は、是非ご自分のための椅子を、メーカーのショールームや、家具販売店の店頭などで実際に座って確かめてみてください。
しかし、会社などで使用される椅子は、ほとんどの場合、すでにあるものを使うほかにないことが多いのではないでしょうか。ご自分にあった椅子を用意することは、現実問題としてなかなか困難ではないかと思います。
では、どうすればよいでしょうか。
その妥協点として、完璧とはいえないまでも、できるだけ多くの人が満足できる椅子を用意する必要性があるように思います。
この「できるだけ多くの人が満足できる椅子」をつくるためにとり入れられたのが「人間工学」という学問です。
人間工学は、椅子のための学問ではありません。
人と機械が共存するための、機械側の人間へのアプローチ手法を、広く研究するものです。
その中で、「座ること」が研究され、現在世に出ているさまざまな椅子にとり入れられているのです。
「人間工学」につきましては、章をあらためてお話ししたいと思います。
人間工学の導入により、現代の椅子は身体に負担の少ないものへと進化を遂げてきました。いろいろなメーカーがいろいろな研究をもとに、より快適な椅子を目指してしのぎを削っています。その点において私たちは、とても恵まれた環境にいます。多くの椅子の中から、自分にフィットする一台を選ぶ喜びを味わうことができるのです。
しかし、腰痛防止の「キホン」は、同じ姿勢を長時間続けないこと、頻繁に姿勢を変えることです。
アップライトとリクライニングの姿勢を上手に使い分けて、快適な「シーティングライフ」をお過ごしください。
(おわり)
※参考文献
『腰痛放浪記 椅子がこわい』夏樹静子、新潮文庫
『心療内科を訪ねて』夏樹静子、新潮文庫
『腰痛を防止する座学入門』野呂影勇・松方健・下出真法、ごま書房
『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳、医学書院
『椅子と日本人のからだ』矢田部英正、晶文社
『椅子の研究』No.1、ワールドフォトプレス
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