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第5話 腰痛のためにできないこと
2008-05-23
夏樹さんの腰痛の苦しみは、第4話のような様々な表現で語られています。
また、腰痛はただ苦しいだけでなく、私たちが日常あたりまえのようにしている行動をも制限します。
腰痛は日常行動のどんな部分を奪い去るのか。
これも『椅子がこわい』より抜き出してみたいと思います。
- 『目覚めた直後から発生する痛みは、背中のあたりまでどんどん増幅して、どうしても寝ている状態に堪えられなくなってくる…』
- 『とにかく起き上がって、着替えをするが、すると再び痛みが頭をもたげ、加えて背中を立てていることがなんとも怠くしんどく、まもなくまたそのへんに横になる』
- 『身体をエビのように曲げてジッと横たわって堪えている以外に何もできないという日も少なくない』
- 『もうひとつの大きな障害は、椅子に腰掛けられないことである。椅子は柔らかいほど嫌で、フワフワのソファなど5分と堪えられない』
- 『固くて背もたれと肘掛けのある椅子ならば、背を凭せかけ、右脚を上にして組む。組んでできた腿の隙間に厚目文庫本を挟みこんで右脚の支えにする。そういう苦肉の姿勢で精一杯頑張って3、40分。それ以上は、腰が圧迫されるような痛みに加え、腰がなんともいえず嫌なつらい感じになって、腰掛けていられなくなってしまう』
- 『立っていればいいかといえば、そうもいかない。何にもつかまらずに立っていると、10分ほどでしゃがみたくなる。交差点で信号が変わるのを待つ間さえ、なんとなく心許なく、手近な電柱などにそれとなく手をついている』
- 『物を買っても、包装してもらう間立って待っているのがいやだ。とにかく身体を縦にしていることが苦痛なのである』
夏樹さんの悲痛な叫びは、私たちが日常あたりまえのようにおこなっている動作ができないことが如何に不便で苦痛であるかをまざまざと見せつけてくれます。
腰痛のために座ることができないことは、私たちの社会的な営みをも阻害します。夏樹さんはそれらの具体例として、次のようなことを挙げておられます。
- ◆レストランや喫茶店に入れない。
- ◆映画、観劇、コンサートなどはまったく無理。
- ◆旅行もままならない。
- ◆電車やバスの椅子に腰かけていられない。どうしても必要があって移動するさいには、車の後ろのシートに横になって行くほかない。
- ◆親しい人と会食し、お酒でも飲んで、いっとき憂さを晴らすことも許されない。
- ◆日常苦もなく、また考えもせずできることが、できない。
この苦痛たるや、いかばかりのものでしょうか。想像を絶するものがあります。
『今の私の最大の望みは、掛けていることを意識せずに椅子に掛けてみたい。立っていることを苦痛と感じずに、ぼんやりと立ってみたい。ほとんどの人が当たり前にやっていることが、私にはただただ羨ましいのだ』
(つづく)
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